目次
登場人物
:日高十郎
:阿藤葵
:広瀬佑太
本編
私の名前は日高十郎。
金と女は全て手に入れてきた。
しかし、私は童貞だ。
早漏のため、
ゴムをつけた瞬間イってしまう。
そう、つまり
ゴムとセックスしているだけなのだ。
その日、私は友人の
広瀬という男と共に夕食の席にいた。
大阪まで出張に出向いた帰り道、
彼から誘いを受けたのだ。
とある店を案内してくれた彼は、
くすくすと微笑んでいる。
「どうしたんだ、
こんな店……凄いところじゃないか」
私がそう言うのも無理はなく、
そこは見るからに豪勢な料亭だったのだ。
「あはは、よせよ。
でも、凄く気に入っている店なんだ」
楽しそうに笑う彼が案内してくれたのは、
能勢黒若牛という成熟したての黒牛を
食べさせてくれるお店だった。
彼がそもそも私を夕食に誘ってくれたのは
「この前のお礼」と言われたが、
お礼に心当たりもない。
昔から気を回してくれる
相手ということもあり、
私は妙に勘ぐっていた。
「何かあるのか?」
「おいおい、
本当に疑心暗鬼だな」
「だから」
「……お前、
最近、疲れているんじゃないか?」
真剣な顔で言う広瀬に、
私は首をかしげる。
「なんで?」
「何となく」
そう言われると、
私も困ってしまう。
「あはは、悪い悪い。
何となくってわけじゃ無くてさ、
お前……また童貞捨てのがしただろ」
「お、おい」
その通りで、
私は焦った顔をするしかない。
「大丈夫だって、個室だから」
「そりゃ
そうだけど……」
目の前に運ばれてきた牛肉を
焼きながら、広瀬は言う。
「昔から
顔良くって性格よくって、
すぐ女にもてるし困らないのに、
なんでかお前
童貞だけ捨てないもんな」
「そう言われても」
「あはは。
ごめん、なんか……
八つ当たりみたいで」
肩を落とした広瀬に、
私もまた落ち込む。
「いや、
本当のことなんだよな……
すまない、広瀬」
「ごめん……
実は俺も、付き合ってた彼女の
葵と破局して……そしたら
お前がまだ独身って
聞いたからつい……」
つまり広瀬は、
私に愚痴を聞いて欲しかったのだ。
しかし愚痴を言いたいのは、
私も同じだ。
私と広瀬は視線を交わし合い、
ぐっ、と互いに握手を交わす。
その真下で、
やわらかくとろけるように
焼き上がった肉が、
じゅううっと音を鳴らしていた。
「今日は
とことん食べようぜ、日高」
「ありがとう、広瀬」
そして私たちは、
能勢黒若牛を堪能した。
口に入れると肉の味がしっかりと伝わり、
舌に脂がトロッと溶けていく。
極上の赤身とは、
まさにこのことだろう。
「うめぇ!!」
「広瀬、
これは本当にすごいな」
「だろー!」
すっかり気分が良くなって、
私たちは金に糸目を付けずに飲み明かした。
とうとう終電さえも逃し、
店も出るべき時間になった。
「本当にありがとな、広瀬」
「いいってことよ、
なー、二次会行こうぜ!」
強請る広瀬に、
私は首を横に振る。
「いやいや、
もう遅いって。それじゃ!」
「仕方ねぇなぁ!
また大阪来たら、連絡しろよ!」
そうして私は
広瀬と別れてタクシーを拾うつもりが……
気づくと、
とろとろに酔っぱらいながら公園にいた。
かけた金の額は違うが、
気分はまるで大学生のようだ。
(参ったな、本当に酔っている……)
なんとか酔いを醒まそうと、
私は歩き出そうとして、
ふと公園にほど近いマンションを見つけた。
おおよそ、
5階建てくらいだろうか。
何故か私は
そのマンションを見上げたまま、
ぼーっと突っ立ってしまった。
そのマンションから
ふらふらっと、女性が一人歩いてきた。
「あれっ、
おにーさん、どうしたの?」
「飲み会帰りですよー」
「そーなんだっ!
実はあたしもそーなのっ!」
Tシャツにジーパンと簡素な服装だが、
それを見事に着こなす
メリハリのある体つきをしている。
ケラケラと笑う顔に化粧気はなく、
お酒を飲んだ後なのか、
ほんわりと頬が赤い。
ショートカットの髪は
月夜に煌めくような漆黒で、
目も同じように美しい黒だった。
輪郭も細く、
とにかく、美人という印象が強い。
しかし、すっかり酔っぱらっているのか、
とてつもなく気安く私に話しかけてきた。
「一人呑みしてて―、
でも今飲むものなくなったからー。
お茶買うついでに、
シメのパフェ買ってこよーって」
「シメパフェですか、
いいですねぇ」
「おにーさんも、
コンビニ行く?」
もちろん、と頷いた私は、
一緒に歩き出した。
女性は『葵』と名乗った。
私は何故か、
初対面であるはずの彼女の名前を、
どこかで聞いたような気がした。
しかし酔っているのもあってか、
まるで思い出せない。
「最近彼氏に
振られちゃってー、
それもあって、
こーして夜に歩くの
なんか久しぶりー」
「そうなんですか。
私も、いつもはこの時間仕事なので、
なんだか新鮮ですよぉ」
それに葵さんは
大変に明るく話をする人で、
私はすっかり彼女との会話に
夢中になっていた。
付近は住宅街と繁華街が
混ざったような場所なのもあってか、
この時間になっても
人や車が行き交っている。
夜とはいえ、
酔っ払いでも少しは安心して
歩けるような道だった。
「ええ、
何時もこの時間まで仕事なの!?
ほんとー?
お兄さんも苦労してんねー」
「お互い様ですよぉ」
お互いに、
酔うと楽しくてたまらなくなる性格らしい。
それに、幸いにして
葵さんとは、
なんというか波長が合ったのだろう。
私と彼女はコンビニへ一緒に行って、
巨大なパフェタイプの
アイスクリームを二つ、
さらにお茶を購入した。
それを持ってしばらく歩いていたのが、
気が付くと、
私は葵さんの家のソファに
腰かけていたのである。
家飲みをしていたというのは
本当らしい。
彼女の家のローテーブルには、
5本もの缶チューハイの空缶と
ハイボール用と書かれた
レモンフレーバーの炭酸水と
ウイスキーが置いてあった。
「おにーさん、
はい! スプーン」
「ありがとうございます」
渡されたスプーンは、
赤い柄を持っている。
反対に葵さんが持つスプーンは、
青い柄をしていた。
よく見ると家のそこかしこに、
二人で使うことを
前提にしたものが置いてある。
失恋したというのは……
そういうことなんだろう。
「葵さん、今日、
私は友人と飲んでたんですよ」
「へー?」
「いつもは
東京に住んでるんですけどねぇ、
こっちに出張で来たらぁ、
友人が一緒に飲もうって」
「いいねぇ。
いいお友達だねぇ」
ケラケラと笑う葵さんに、
私は続けて言う。
「それで彼がね、
心配するんですよ。
お前まだ独身なのかーって」
「うっそ
お兄さん独身なのぉ?」
「独身なんですよぉ」
「あははは!
私も独身ー!」
いえーい、と、
二人でパフェアイスの容器をぶつけ合う。
チョコレート味のパフェアイスは、
子供のころに連れていってもらった
ファミレスのような、懐かしい味がした。
「私はねー、
彼氏とぉ、
結婚前提だったんだけどねー」
「別れちゃったんです?」
「彼氏ねぇ、
何時も凄い忙しくてぇ……
私が、それが、嫌だったの。
でも思うとね、それって、
今の時代どうも、
ワガママなのかなぁって」
私は口を閉ざし、静かに頷く。
葵さんはパフェアイスを頬張り、
それをお茶で流し込んでから続けた。
「支えられるような女じゃない、
私だって仕事がしたい、
でも忙しい彼氏と一緒に住むと
家のことって、私の負担が
自然と増えちゃって……
それがむしゃくしゃしてさぁ」
「なるほど……」
「自分にも、彼氏にも。
それで大ゲンカして……それっきり」
葵さんはそう言うと、
がっくりと肩を落とした。
Tシャツ越しのブラトップの肩ひもが、
くいっ、と浮き出てくる。
「同居してたんです?」
「そーなの。でももう、
彼氏のものも捨てなくちゃね、
そのスプーンも一緒に」
ちらっとこちらの手元を見た彼女に私は、
頷きもなにもせずただパフェアイスを
食べすすめる。
ほう、と酔った吐息を
吐きだした葵さんは、
頬をさらに赤く染めていた。
「……葵さんは、
後悔してるんですか?」
「んー、どうだろね。
彼氏は凄く、
いい人だったと思う。
でも、結局。
最後まで私の負担を
減らす方へは
動いてくれなかったんだよね……」
「そうでしたか……」
「元気だといいなぁっては思うけど、
私と結婚して生活するんだとしたら、
もっと一緒に話す時間が
欲しいなぁって感じ……」
不意に、葵さんが立ち上がる。
冷蔵庫をごそごそと漁り、
新しく缶ビールを2本持ってきた。
「よーし!
辛気臭い顔はよそう!」
「おっ、
いいですねぇ!」
私もあえて、大きめの声を出す。
「このビール、
私すっごく好きなの。
お兄さんも飲んで飲んで!」
「頂きます!」
ぐっ、と、飲むと、仄かな苦みの後に
軽やかな柑橘系の香りが
鼻へふわっと抜けた。
ビールの苦みが嫌いだという女性にも
おすすめできそうな、
やわらかい口当たりをしている。
「美味しい……!」
「でしょでしょ!
ささっ、グッといって、ぐっと!」
その瞬間、
ドンッ、と、壁が殴られた。
私と葵さんは思わず身をすくめて、
しーっ、とお互いに黙り込む。
「……今何時だっけ?」
「あっ、深夜二時ですね」
それは、壁も叩かれて当然だろう。
「静かにしよっか」
「そうしましょう」
ひそひそと話すと、
なんだかとても楽しくなった。
二人で小さな声で笑いあいながら、
次第に……距離が近くなる。
「そういえば、
お兄さん。名前は?」
「内緒ってことにします?」
「あたしだけ
知られてるの、ずるいじゃない」
フローリングの上に敷かれたラグへと、
彼女の手に引き込まれた。
優しく顔を寄せ合い、
甘いアイスの香りがするキスを交わす。
「んっ……ゴム、そこ」
「ああ、これです?」
「そうそう。
あはは、ごめんねぇ、
お兄さんが知る訳ないのに」
彼女にはまだ、
未練があるのかもしれない。
そう思いながら、私はゴムをつける。
瞬間、どぴゅっ、と、
精液が出る感覚と共に、
頭の方が急激に涼しくなる。
(あれ?)
体がふらつき、
視界がぐるんぐるんと回りだした。
それにいつもだって、
こんなにすぐ射精はしない。
そして……気づくと私の目は、
天井を見ていた。
「おにーさん、大丈夫?」
葵さんが、恐る恐る覗き込んでくる。
「おにーさんさ、その。
ゴム付けた後、突然射精して、
倒れたんだよ。大丈夫?」
体を起こすと、
時計は何と午前6時を指していた。
射精どころか、
気絶までしてしまうとは思わなかった……。
あまりのことに、
私の顔が真っ赤になる。
今までそんなことはしたことがないが、
ひょっとすると
かなり酔っていたせいだろうか。
黙り込む私に、
葵さんが優しく話しかけてくれた。
「彼氏もさ、
たまにあったんだよね……
ゴム付けて、すぐ射精」
「えっ?」
「疲れてて、
お酒飲んだ後とか、
よくあったの。
お兄さんも
そうじゃないのかなーって……
ごめんね、無理させて」
すっかりしょげてしまった葵さんに、
私は思わず起き上がる。
「いえ、私のせいです……
私が、早漏だから」
「お、お兄さん?」
「男が早漏であることと、
葵さんが無理させたかどうかなど、
関係ないんですっ!
早漏だから、だから!」
まだ酔っていることを自覚しつつ、
私が葵さんの手を握り締めると、
彼女は泣きそうな顔になった。
「……お兄さん、
ほんと。いい人過ぎるんだね、
きっと」
彼女の腕が、私を包み込む。
一晩、適当に寝たからこその、
彼女自身の香りがあたりに漂う。
それは嫌な臭いではなく、
むしろホッとするような香りだった。
「大丈夫だよ。
いつかきっと、おにーさんが……
そういうことを
言わなくていい日が、きっと来る」
ぽんぽん、と
私の背を叩いてくれた彼女の背後には、
写真立てがあった。
よせばいいのに私は、
ついそちらを見てしまったのだ。
(こんなに優しい人と別れることになった、
葵さんの彼氏と言うのは……)
笑顔の葵さんと、その隣に並ぶのは……。
(広瀬……!!)
見間違えるはずもない。
あれは、
昨夜私を誘ってくれた、友人の広瀬だった。
(そうだ、葵という名前に
聞き覚えがあると思ったら!!
広瀬との会話で出てきた、
別れた彼女の名前じゃないかっ!!)
つまりあのまま、
葵さんとセックスをしていたら、
私は広瀬と穴兄弟になっていた。
私の背中に、
ツーッと冷たいものが走る。
もしも、だ。
もしも、葵さんが広瀬とよりを戻したら、
この日のことが伝わるかもしれない。
いや、それだけでなく、
私が広瀬の友人だといつの日か分かる日が
来るだろう。
そして、私が酔っぱらった帰り道に、
知らないとはいえ広瀬の彼女だった葵さんと
セックス一歩手前までいったことで、
友情に亀裂が入るのは想像に難くない。
お互いにお酒で酔うと口が軽くなるのは、
昨夜のことを思えば、すぐに予想がつく。
「じゃ、私はこれで」
そそくさと、
私は別れを切り出した。
「うん、ありがとね!」
楽しそうに笑う葵さんは、
幸いにして私が広瀬の友人だとは知らない。
(よかった……)
この時ほど、
私は早漏で良かったと、思ったことはない。
それに。
セックスよりも友情を気にしている時点で、
私には本当の脱童貞は遠いのかもしれない。
私の名前は日高十郎。
金と女は全て手に入れてきた。
しかし、私は童貞だ。
早漏のため、
ゴムをつけた瞬間イってしまう。
そう、つまり
ゴムとセックスしているだけなのだ。
大阪の朝陽は眩しく、私を照らしていた。
お わ り
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